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TO HEART −心の中へ−

 僕は長いこと心の病を持ちつづけていた。対人恐怖という病である。
 小学校のときからずっといじめられていた僕は、自分に自信がまったくなく、ずっと「こんな自分なんだ」と思いつづけてきた。小学校3年のときには、トイレの個室に閉じ込められて「もう一生出ない!」なんて言ってみたり、5年生のときには、コタツのコードを見て、ふと「これで首をしめたら死ねるんだよね」と考えてみたり…そんなことが続いたとき、あるきっかけで人間不信に陥ってしまったのだ。
 中学2年のとき、すでにそのころ殴る蹴るなどの暴力が続いて耐え切れなくなり、担任教師に相談したことがある。ところが、その担任が何も対策をしなかった。そう、聞いているようで聞いてないふりをしたのである。それに納得しなかった僕は、ついに「もう人間なんか信用しない」と思ってしまったのだ。これが、僕の対人恐怖になったきっかけでもある。
 その後、自分の生真面目な性格が幸いして、本当の意味での病気とはならなかったのだが、その結果として心理的な治療を受けなかったために、対人恐怖についてずっと悩むこととなったのである。
 今から5年前の1996年、さすがにこれではまずいと考えた僕は、いろいろなことを試すようになった。僕が実質的な運営をしているサークルで、他のサークルとの交流を始めたのもそのひとつであった。ただ、これらはある意味自分の力ではない。自分の力で何とかしなければこの状況を脱することはできない、というわけで、いろいろ考えた末、1998年に創作サークルに入会したのである。
 そのサークルでいろいろな活動をしてきたのだけれど、その中で集会というものがあると知った僕は、それに参加しようと思っていた。でも、まだ人間が怖いと思っていて、うまくいかなかったのだ。その後、ある人の助けを借りてその集会に参加して、いろいろな人と知り合うことができた。そして、周りは思ったよりも複雑に考えていない、むしろ自分のほうが考え過ぎなんだな、と感じたのである。
 「心」というのは自分を映す鏡だといわれる。ほんとにそのとおりだなと思う。その「心」に素直になることができれば、もっと成長できるのかな、なんてとも思う。
 今の自分は、周りで遊んでくれたりする人たちがいて、その人たちに支えられていると感じる。そういうことをもっと大事にしていきたいと思うし、もっといろんな人とお話をして、自分がいい方向に成長できるよう、頑張っていきたいと思う。
 いろんな人を分け隔てなく好きになる。そして、心の中で素直になる。これがすごい大事なことなのかもしれない。