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・幻(まぼろし)の彼女・

「先輩 キスしてくれませんか?」

彼女にそう言われたとき 僕は

「ちょっと待って」と断った

思えばあの時

僕がもっと勇気を持っていれば

こんなことには ならなかったかもしれない

僕がふがいないばかりに

彼女を傷つけてしまった

 

新学期になって初めて 彼女を見たとき

僕は何となく 彼女に惹かれていた

ただ委員会の後輩だというだけなのに

彼女に会うたびに 少し心が踊っていた

ある時 電話があったときも

他愛のない話だったけど

長電話してしまったよね

 

夏休みに彼女に呼ばれて学校に行った

そのときも

こんなふうにして 話こんでいたけど

突然彼女から

「先輩 キスしてくれませんか?」

と言われたのである

僕はその時初めて

彼女も僕を好きだと分かった

 

それまで僕は嫌われていて

誰も僕を好きだと言う人がいなかったから

「好き」ということは

そんなものだと思っていた

まさかこうして 「好き」といってくれる人が

いるとは思わなかったから

そんな態度をとったんだと今になって思う

 

ごめんね もっと君に優しくしてあげれば

君を傷つけることはなかったと思うのに

君をこんな気持ちにして

君の心をこんなに傷つけてしまって

本当にごめんなさい