寝台列車の通る街 ・・・プオォーン・・・ 毎朝、いつもと違う汽笛が聞こえる。そしてボクの目の前を青い機関車と青い客車が通り過ぎていく。ボクはそれを見るのがずっと楽しみだった。 ボクが大きくなるにつれて、あれはTという大きな町とSという港町との間を行ったり来たりしている寝台列車だということがわかった。寝台列車というのは夜、列車の中で寝ているといつの間にか行きたいところに着いているというものだ。あれに乗ってみたい…僕はそう思うようになった。 「あれはキミの行っちゃいけないところに連れて行くんだ」 と。でもボクは知っているんだ。あれはまだ見たことのない不思議な街へ行くんだと。 ・・・プオォーン・・・ ボクの頭の中では、今もその汽笛が聞こえる。 (終わり) |